
第35話:屋根工事①
壁のパネルが納まった現場の次の工程は「屋根断熱工事」 と 「実験ソーラー工事」です。
この屋根工事では、日本で初めて行われる特殊な実験施工があります。
目玉は「三位一体ソーラー」です。
「ソーラー発電」 ・ 「ソーラー給湯」 ・ 「ソーラー集熱」
を1つの屋根面ですっきり見せる工事です。
今回から3回くらいにわけて「屋根断熱」と「三位一体ソーラー」について少し詳しくご説明しましょう。
まず、今回の屋根の断熱厚みは480㎜です。正確な寸法で言いますと、2×10材(38㎜×235㎜)の材を井桁にした骨格に120㎜厚×4段=480㎜厚の断熱をします。
木材が235㎜×2段=470㎜とも言えます。
そして、実験ハウスに使う断熱材は、下の写真のようなトラック2台分(^^;)になります。
屋根の断熱にこんなに厚みが必要なのか・・と言われますと、コストバランスの面ではこんなに必要ないと考えております。
「OBさまの期待」 と 「どれだけ大変な作業だろうか」という知るために挑戦しました(^^;)。
まずは、井桁に組んだ上半分240㎜分を野地板の施工前に上から断熱します。
まさに天気との勝負です。
・・・とはいえ、実は・・雨が降っても大丈夫なのです(^^;)。
グラスウールが濡れても、屋根施工後の日差しで屋根の裏面が暑くなり、浸み込んだ水分は蒸発してしまいます。
絞り出るくらい断熱材に水が染みても乾くことを実証しておりますので神経質になる必要はありません。
上から断熱作業した様子と、下から断熱施工の様子です。
下から見ますと、断熱材の端部が引っ込んでいるのがわかります。
これは下から作業するときに釘かフォークで手前に引っ張って、なるべく厚みがきれいになるように調整します。
そして、下から地道に240㎜の断熱施工をして、防湿シート+配線胴縁という施工順になります。
上からの施工方法はソーラーがあるので特殊な施工方法を取ります。
それは次回ご説明いたします。
つづく
【木の香の家 展示場 兼 実験住宅 物語は 5日 15日 25日 に何とか更新していきます。】
第34話:壁パネル2階-空飛ぶ未確認飛行物体-
2階の壁パネルを設置する朝、現場には虹が掛かりました(^^)。
こんな些細なことでも気持ちを前向きにさせてくれます。
(今日も、なんとかうまく進みますように・・・)
2階の床合板を貼った状態で、壁パネルを待ちます。
しかし、ここでスタートから思わぬ問題が発生・・。
その日は、かなりの強風だったのです。
大げさに言えば、台風並みかもしれません(><)
壁パネルが糸の切れた凧のようにクレーンの吊った状態で踊り始めるのです。
バタバタ・・ぐるんぐるん・・・。
壁パネルが外れて飛んでいくのでは・・と思うほど、紙のように振れ踊るのです。
見ていて「危ない危ない!」と口にするほど、危険な感じがしました。
(危険すぎて写真を撮っている余裕がありませんでした (--;))
それでも何とか1つめの壁パネルを設置・・。
しかし、クレーンのWAGさんからも「ちょっとこの風では危ない。パネルが外れたら大変だ」という話がでて、しばし会議・・(> <)。
風が落ち着くのを待つかどうか・・。
しかし、風が強いままだったら、またしても観客の居る前でいきなりの作業中止...(--;)。
そんな中で、クレーンのWAGさんから提案が出ました。
「パネルを水平にして上げよう。風の抵抗が少ないはずだから。」
私「でも水平にしたら、どうやってパネルを設置するんですか?」
WAGさん「一度、2階の床の上に下して、そこでパネルを掴み直して起こせばいいさ」
議論した結果、一工程作業は増えますが、その方法で進めてみようとなりました。
パネルを水平にして吊り上げます。
まるでUFOのようです(^^;)
この案は素晴らしく、強風の中でもパネル運搬が危険と感じることは無くなりました!。
2階のパネルがどんどん組みあがっていきます。
現場とは、工場生産と違うトラブルがつきものです・・(--;)
そんなときでもみんなで知恵を出し合えば解決策が見つかるものだなぁ・・と改めて感じました。
木製サッシ付きのパネルもUFO化。
いったん2階の床の上に着地させます
次にパネル上部を掴みなおして
起こします。
そして、設置。
2階は風の影響以外では、1か所パネル現場調整があったくらいで、おおむねスムーズに進みました(^^)
2階部分の壁パネルは、午前中で終了しました!
午後から屋根組などの作業を行って、建て方としての骨格はほぼ見えました(^^)
次は、いよいよ屋根断熱と三位一体のソーラー設置に進みます!
つづく
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第33話:壁パネル設置(1日目)
木製サッシ付き壁パネルがなんとか納まったことで一息ついた現場は、続けてどんどん1階の壁パネルを設置していきました。
ここからは、思い描いていたようにどんどんスピーディーに出来ていきます。
付加断熱200㎜厚を確保した断熱パネルです。
内側の断熱材と合わせると壁は300㎜断熱になります。
当社では初の厚みなので、完成後の暮らしが、どんな「空気感」になるか楽しみです(^^)
大きなトラブルもなく、家の形が見えてきました
和室側の壁パネル も 北側のパネルも はまり
半日後には1階の壁パネルがほぼ設置終わりました。
内部の梁掛けと微調整をして1日目が終わりました。
1日目の実験作業がうまくいったことを象徴するかのように、
木製サッシが夕陽に照らされて光っていました。
つづく
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第32話:壁パネルスタート と いきなりの・・
土台も敷き終わり、いよいよ念願の壁パネル施工の日がやってきました。
その日は、「木製サッシ壁パネル」も「厚壁断熱パネル」も設置予定だったので、見学の方が多く来ました。
朝の6時には既にパネル工場から壁パネルを大量に積んだトラックが現場に来ておりました。
出勤ラッシュの時間帯を避けての到着のようです。
朝の7時過ぎには青森から見学の第1団体が到着し、いよいよ大実験施工がスタートする高揚感を持ちました。
記念する実験パネルのスタートは、いきなり木製サッシパネルです!。
木製サッシが重すぎるため、土台まで一体化した発案パネルです。
200㎏を超える木製サッシパネルを見事に吊り上げます。
「これを現場で移動しながら設置していたら大変だなぁ」
「パネル化だとクレーンで出来るのでよかったよかった」
(ただ・・このパネルが落ちた瞬間に100万円は吹っ飛びます(--;))
パネルを基礎の上に設置して・・
ところが・・ここでいきなりの問題発生・・
パネルが・・はまらない・・(@@;)
「なんで」・・
現場に緊張感が走りました。
見に来ている人にも、大工さんにも、そして私にも緊張感が走りました。
パネルを設置する前に思い描いてたのは・・、『 壁パネルが思い通りどんどんはまっていき、木製サッシパネルの部分は、わずか10分程度で完成!』・・とイメージしていたのですが、見学者の前でいきなりのつまずきです(><)。
ある程度パネルとパネルを噛ませてから、かけや(大きなハンマー)で叩いてもパネルが納まりません。
右往左往している中が、壁パネルがもし倒れたら・・200kg超えのパネルですので、大けがする可能性もあります。
下手をすると死亡事故にもなりかねません・・(><)
何度か別の方法でも試してみたのですが、うまく入らず最悪の「初日スタートから終了」・・
・・も覚悟しました(--;)
しかし、場数を踏んでいるだけあり、T大工さんは冷静に慌てる素振りは見せません。
もちろん、こんな時こそ慌てるとロクなことがないのは私も経験しています。
「なんでハマらないのか、ちょっとスケールでいろいろと測ってみよう。」
そう言ってT大工さんは、土台の長さやサッシパネルの長さ・高さを落ち着いた素振りで測ります。
1台1台のパネルの精度や土台の長さには大きな問題はない・・。
基礎天端の問題か?
墨出しの問題か?
いろいろ検討した結果。
土台の1本1本の長さが微妙に伸びたことの蓄積だとわかりました。
今回の実験住宅は、パッシブソーラーを目指して東西方向に長い設計になりました。
東西に18mもある設計のため、仮に3~4m土台が6本並ぶとします。
1本が0.5㎜伸びてたとしますと、6本で3㎜寸法が違ってくることになります。
東西の端から土台を固定していくと、木製サッシが付く壁パネルの部分で、それらの蓄積の合計分3㎜・・わずか3㎜の差で土台がはまらないのです。
議論した結果、土台全体を締め直すのではなく、片側の土台を切っても大きな影響がないことがわかりましたので、ゆとりをみて6㎜ほど切り落とすことを決めました。
現場とは工場生産とは違い、いろいろとハプニングはつきものですが、久々に冷っとするハプニングでした。
スタートからこれでは思いやられる・・という思いと、その現場調整でうまく木製サッシパネルが納まったことで拍手が起き、いろいろ起きても前に進めるぞ・・というポジティブ感と混ざり合った不思議な感じになりました。
この木製サッシパネルを納めるのに費やした時間は1時間半・・。
それでも、きれいに納まって安堵したのが一番の心境でした(^^;)。
さあ、ここからはガンガン行くぞ!
つづく
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第31話:土台敷きスタート:シロアリとホウ酸
予定より1週間ずれましたが、流れとしては悪くないという感覚をもっていよいよ土台敷きとなりました。
最初の作業は 土台気密パッキン+土台敷き+床合板の設置です。
現場には、そのための「土台」「プレカットされた床合板」「大工さんが作った屋根パネル」が揃っていました。
(山積みされた屋根パネル)
(プレカットされた床下地合板)
今回はなるべく岩手県産材を使おうという目的もあり、土台にはカラマツ集成材を使いました。
カラマツ集成にホウ酸を噴霧するという手法です。
米ヒバをよく使っていますが、今回は集成材でないとまずいという事情と、米ヒバが入手が難しいタイミングなども今後あることが予想されるので、
そういう場面を想定して今回はあえて岩手県産材カラマツ集成材+ホウ酸で施工します。
ホウ酸とシロアリについて少しだけ記述いたします(詳しくは近日別ページでアップします)。
いろいろと勉強会に参加してみて、私は現時点ではホウ酸でシロアリ対策することをお勧めしております。
私がホウ酸を一番いいと思っている理由は下記の点です。
① 昨今の構造材に塗るオレンジ色の薬品は、人体に影響が少ないように毒性を弱めているため、以前は10年保証だったものが5年保証・3年保証・・・と徐々に期間が短くなってきています。裏を返すと、5年後には毒性がシロアリに対抗できないという意味ですので、これから30年以上暮らしていく家にはどうなのか・・という疑問点があります。また、周辺土壌に毒素を撒くのにも抵抗はあります。
② セミナーの中でなるほどと思った言葉があります。
毒で虫を殺そうとした場合、虫も耐性を持つことが考えられます。耐性が出来れば、その毒はシロアリに対して無毒になります。
ホウ酸は、毒ではないので耐性ができません。ホウ酸ダンゴが江戸時代からあるのは、それを立証しているようなものです。
③ ホウ酸を耐シロアリ材料に認定していなかったのは世界中で日本だけです。ようやく数年前に認可がおりましたが、世界中でシロアリの一番手に上げられるのはホウ酸だそうです。ハワイだかニュージーランドだかでは、ホウ酸にどぶ付けした木材以外は使用してはダメというほど、ホウ酸が世界のスタンダードなのだそうです。
(セミナーの話で申し訳ございません)
④ ホウ酸は哺乳類が飲むと尿として排出されます。昆虫が飲むと排出できず、結果として代謝が止まって死ぬというメカニズムなのだそうです。つまりは、毒ではないのです。
こんな知識と、最近は15年保証も出てきているので、「無毒」+「半永久的」という観点からホウ酸が一番と思っております。15年保証を付けるということは、メーカーは安全率を見て保証期間を決めるはずですので、基本的には半永久的だと思っております。
※ 15年保証を取る場合は専門業者にホウ酸施工を依頼する必要があります。
皆さんも大切な家ですので、5年保証の毒性素材よりは、半永久的なホウ酸を、建築依頼する住宅会社さんにお願いしてはいかがでしょうか。
東京からホウ酸施工は広がってきてますが、現在では宮城県でも岩手県でも施工業者がいます。
( 岩手県内のお問合せ先 : 東北住建㈱ 担当:瀬川 019-638-4111 )
アメリカ乾材シロアリにも効くそうですので(昆虫全部なので当たり前ですが)、私はお勧めです。
ちなみに、最近では常識になってますが寒冷地といえ岩手県にもシロアリはいます。
下の写真は当社のOBさま宅で被害にあったときの写真です。
(現時点では当社は1件だけです。)
当時、基礎断熱材に防蟻性のものが出ておらず、シロアリは懸念されておりました。
そのため、当社では基礎断熱の地面より下には、一応、ダイライトをテーピングして貼る・・という気を使った施工をしておりました。
(地面よりちょっとだけ見えているのは、シロアリが食べないボード ダイライトです)
ここまで気を使って施工する会社は無かったと思いますが、相手は虫ですので、どんな隙間からでも入ってきます。
(ちなみに、基礎の内側に断熱材を張るのでシロアリ対策品でなくても大丈夫・・という言葉は信じない方が良いと思います。)
そして、シロアリの面白い行動は、食べたくない米ヒバの土台は蟻道を作って迂回するのです。
そして、食べやすい柱を食べます(><)。
(土台は食べられず)
建築して7年目でしたので、仮に5年保証の薬品を塗っていても被害はあったと思います。
また、下の写真は、私が今住んでいる貸家(岩手県北上市)の庭先に置いてあった木を裏返したときの写真です。
見事にシロアリさんに食べられていました(^^;)
こんなこともありますので、寒冷地と言え、シロアリ対策はきちんとしていた方が良いと思います。
*****************
土台を敷いて、床合板を敷く前に家族総出でホウ酸水を噴霧していきました(^^)
最後はきちんとプロにやってもらうのですが、家族も家づくりに参加したという記憶を残すためです。
<シロアリとホウ酸について:後日別サイトにアップします>
そして床合板を敷き終え、いよいよ、明日からの壁パネル施工へと進んでいくのでした。
つづく
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第30話:T大工さんからの電話
T大工さん 「白鳥さん。悪ィ。建て方1週間ずらしてくれ!」
大工さんから来た電話の開口一番のこの言葉に私はびっくりしました。
私 「え!?・・どうしたんですか?」
T大工さん 「おふくろが死んだ」
私「え...」
T大工さん 「実は、もってあと10日~2週間かな・・という状況だったんだ。
建て方終わったら、屋根板までかけて雨が入らないように囲った状態で何日か休みをもやおうと思っていたし、
下手をすると建て方中に建て方をストップするかもしれないと心配はしていたんだ。」
私 「そうだったんですか...。」
T大工さん 「今、病院から電話があって、急に亡くなったと連絡が入ったんだ。
実は、今日の昼間も会ってきたんだよね。」
私 「そうだったんですか。まずは分かりました。1週間ずらす手配を掛けます。
お通夜や告別式の日程と場所をあとで教えてくださいね。」
T大工さん「悪いね」
私「いえいえ。あとでゆっくりお話ししますが、救われた感じがします。
それではまずバタバタしているでしょうから...。」
電話を切った私は不思議な感覚になっていました。
まずはパネル工場のSさんに電話して事情を説明しながら、1週間延びることになったので、「厚壁パネルに再挑戦」の方向で決まりました。
そして、フェイスブックやメールやFAXで「建て方を1週間スライドする」ことを連絡しました。
事情は、もちろん大工さんの身内にご不幸があったということです。
お通夜の会食の時、T大工さんとゆっくり話をしました。
T大工さんのお母さんは年齢的に大往生であったこともそのとき知りました。
その中で私からは、1週間建て方がずれたことで救われたことを、今までの経緯も含めて裏事情を話しました。
T大工さんからは、建て方中に亡くなったらまずいなぁ・・と冷や冷やしていたことなど、どのタイミングで亡くなったらこうしよう・・と想定していたことの話をされました。
うまく表現できませんが、
T大工さんのお母さんは、最後の最後までT大工さんや私を助けてくれる
このタイミングで天寿をまっとうなさったのかな・・
という不思議な感覚を2人で話していました。
私も人生の最後は、最後の瞬間まで誰かのためになる形がいいなぁと思うのでした。
T大工さんのお母さん...長い人生お疲れさまでした。
そして、ありがとうございました。
つづく
【木の香の家 展示場 兼 実験住宅 物語は 5日 15日 25日 に何とか更新していきます。】
第29話:壁パネル化実験と不思議な30分間
建て方が徐々に近づいているころ、この実験ハウスでは建て方の方法についても新しい実験を計画しておりました。
それは、分厚い断熱壁の「大型パネル化」です。
300㎜断熱という超高断熱住宅で、壁をパネル化して現場の工数を減らせないかという挑戦です。
この壁パネル化の主な目的は下記のような点です。
① 付加断熱をするようになってから、時々お客様に「なかなか外壁工事になりませんね」と言われます。
大工さんの視点から見ますと、家2軒分の断熱をするので手間が掛かるのは仕方がないとなるのですが、多くのハウスメーカーさんは建て方が終わると、すぐに外壁施工を始めるため、比較するとやはり進みが悪いように見えます。
その点の解決策にならないか・・。
② トリプルガラスになってからサッシが非常に重く、2階に大型サッシがあるとそれを持ち上げるだけで重労働となってきています。それを壁パネル化してサッシを組み込むことで、現場の重労働を軽減できないか・・。
③ 今回は、大型木製サッシを4台設置します。そのサッシの重さが一窓=200kg超もあります(@@;)。
そんなサッシを現場で施工するのは非常に重労働になるため、この木製サッシをパネル化することは現場の安全面と現場スピードからも必須と考えました。
④ そして、200㎜付加断熱(300㎜断熱)のパネル化の可能性を探ろうという目的もあります。
こんないろいろな目的がある実験だったので、基礎工事中にパネル化の詳細図面と工場との打ち合わせを重ねておりました。
(壁パネル製作の様子:90㎜付加断熱時)
そして、建て方2週間前には壁パネル製作も始まり、新住協のメンバーや業界新聞社も含めて多くの方々に建て方時の予定表を配信していました。
○月○日 土台式 ・ ○月○日1階壁パネル設置 ・ ○月○日2階壁パネル設置 ・ 見ごたえのある日は〇月〇日 など・・取材に適した日程まで書き込んで連絡済でした。
銘打ったのは「300㎜断熱の大型パネル化」に挑戦です。
(大型パネル化のために作図した図面の一部)
全ての手は打った・・と思い、時々パネルの進捗を見に行ったり、大工さんと建て方後の作業について詳細打ち合わせをしていました。
そんな建て方開始10日前でした。
夜8時ころだったと思います。
突然、予想もしなかった電話が入りました。
パネル工場からでした。
パネル工場担当Sさん 「白鳥さん・・。すみません。建て方を1週間ずらしていただけませんか・・。厚壁パネルが予想以上に時間が掛かることがわかり、とても建て方に間に合いません。」
私 「え!・・。それは困ったなぁ・・。もう、メールでもフェイスブックでもたくさんの人や報道関係の人にも作業工程表を送ってしまっているんですよ。クレーンも日程をおさえてますし・・、その後のソーラー作業の日程もおさえてあるんですよ・・。」
Sさん 「厚い付加断熱下地の無いパネルであれば間に合いますが、どうしても付加断熱部分の作業が、90㎜厚のときと比べて200㎜厚でこんなに作業性が違うのかと思うほど時間が掛かるのです。木製サッシを組み込むのも予想以上に大変ですし。」
私 「困ったなぁ・・。あまりにも多くの人に告知してしまったので、いまさら『パネルが間に合わないから1週間ずらします』って格好悪いなぁ・・。」
Sさん 「付加断熱下地なしで進めますか・・。」
私 「それもそれで、『せっかく厚い断熱パネルを期待して見に来たのに』 となりそうだなぁ・・・」
Sさん 「困りましたねエ・・」
私は、既に告知した作業日程を優先して付加断熱下地なしの普通壁パネルにするか...、
厚壁パネル実験のために日程をずらすか...
悩みに悩みました。
一度電話を切って、T大工さんにメールをしました。
私のメール 「付加断熱下地・・パネル化しないで現場作業でいいですか?」
T大工さんのメール 「いいよ」
私は、多くの人の予定を変更するには大義名分が無さすぎると判断し、厚壁実験をやめて普通の壁パネルで建て方することを選択しました。
これで、新聞取材の意味もなくなり話題性の乏しい建て方になるのは決まり、わざわざ見に来る人にとっても、見る意味の少ない建て方になることは明白でした。
私はパネル工場担当のSさんに電話しました。
私 「厚壁パネルをやめましょう...。とても、パネルが間に合わないから建て方を1週間ずらします...とは言えないほど、いろいろな段取りをしてしまっているので・・。」
Sさん 「申し訳ございません...。それでは明日から、普通パネルで作業を進めます。」
私は電話を切った後、心の中で「がーーーン(--;)」と呟いていました。
私の心の中「せっかくあれだけパネル図を作って、打ち合わせも重ねてきたのに、ほぼ無駄になってしまった・・(--;)
この家づくり・・流れがいいのか 悪い流れに乗っているのか 判断に困ることが多いなぁ・・。どっかで大きな落とし穴があるのかなぁ・・」と心配する気持ちでモヤモヤしていました。
土地探しからの流れはいいと思えば、パッシブハウス認定はギリギリで足元をすくわれ断念。
何かが引っ掛った気持ちになり・・、しかし、そのおかげで暮らしやすいプランに急変し「怪我の功名」と思えるようになりました。
基礎工事中はギリギリで新しい実験工事が間に合ったかと思えば、せっかくの厚壁実験はギリギリでNGとなる・・。
私は、人生の流れが変わることだけを恐れています。
いい流れなのか悪い流れなのか判断できないこれらの二転三転の出来事に「どういう流れなんだ」・・と自問自答して家づくりは進むのでした。
家づくりは、現場の状況で図面からの調整が必要になることはしばしばあります。自由設計で、なるべくお客様のご要望に「無理です」と言わない家づくりを進めているので、そういう現象が起きます。それが「怪我の功名」と思えると安堵し、そう思えないとストレスがたまるものだなぁ・・・と自分の家づくりを通して感じます。
私の場合は、最後は、「人間万事塞翁が馬」という哲学を持っているので、その起きた現象から何かプラスになる要素を見つけようとします。
しかし・・今回の厚壁パネルの施工実験断念はモヤモヤ感が強いものでした。
そんなパネル工場担当のSさんと30分間の悶々とした電話のやり取りのあとでした。
T大工さんから突然電話が入りました(おおよそ夜8時30分)
それも、つい先ほどの電話内容よりも、はるかにびっくりするような電話内容だったのです。
T大工さん 「白鳥さん。わりィ(><)。建て方1週間ずらしてくれ!」
つづく
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第28話:20年前の約束
基礎工事もギリギリに変更を繰り返しながらも、なんとか「実験工事」・「測定センサー設置」も含めて完成しました。
基礎は終わりましたが、木工事開始まで1か月ちょっと空きます。
理由は、今回の木工事は当初から大工さんが決まっていたからです。
担当大工さんがいつから決まっていたのかと言いますと・・、
20年前からです。
20年前、私はN建設に勤務するペーペーでした。
もちろん、その当時から断熱気密については、勉強しながら知識を増やしておりました。
そして、その大工さん(T大工さん)は、N建設ではなく別のハウスメーカーに所属する大工さんでした。
何故、そんな別のハウスメーカーに所属するT大工さんと接点があったのかといいますと、N建設の物件が重なったときに大工さんが不足してしまい、そのハウスメーカーさんから助っ人として一時的にお借りしたのでした。
N建設時代・・、私の記憶では、T大工さんと現場を一緒にしたのは、その1物件だけだったと思います。
その現場を進めている間のお互いの印象はこんなものだったと思います。
(私のT大工さんに対する印象)
〇 難しい仕事でも丁寧にこなして、自信満々でありながら低姿勢な大工さんだなぁ・・。自分の意見をどんどん言う大工さん。
(T大工さんの私に対する印象:あとで聞いた話)
〇 普通は、自分(T大工さん)が「こうしたほうがいい。こんな感じで施工する」と意見をいうと、ほとんどの現場監督は「はい。お任せします」と言う。
こいつ(私)は、まだ若いくせに「それはお任せします。でも、これは断熱の観点から、こういう感じで施工してください。」と自分の意見を持ってくる。
その割には、下請け業者に対して偉そうにしない。
〇 現場のごみ運びや、雑作業など、普通の現場監督が嫌がる作業も気にしないでやっている。
こんな感じです。
そんな現場での木工事は、きれいに施工したいT大工さんの意見と、断熱理論をきちんとしたい私の意見をすり合わせながら、がっぷりよつで進んでいきました。
終盤にはこんな会話が出るほど、私とT大工さんは仲が良くなっていました。
T大工さん 「白鳥さんは、いずれ独立するタイプだな。」
私 「え?俺が独立するんですか・・? 今のところはイメージが出来てませんね。」
T大工さん 「間違いなく独立する。」
私 「いつか独立したいなぁ・・という思いはありますが・・」
T大工さん 「そのときは、俺が手伝ってやるから声かけて。この現場終わっても、俺の現場にちょこちょこ仕事を見に来てよ。俺の仕事ぶりが分かるから。」
私 「見に行っていいんですか?それじゃ、面白い現場があったとき一度ご連絡いただけませんか!」
T大工さん「それと白鳥さんが自宅を建てるとき俺がやってやるから。」
私「ホントですか!?それはお願いしますね!。」
その当時は、仙台から150kmも離れた岩手に来るとは夢にも思っておらず、仙台のどっかに家を建てるのだろう・・と思っていました。
T大工さんとは、その後、仕事を一緒にすることは無かったですが、T大工さんがやっている某ハウスメーカーさんの現場を見に行ってその腕の良さをますます知ることになったり、断熱施工的な意見交換をしたりする機会があり、なんとなくつながっていました。
たった1つの現場をいっしょにやっただけで「白鳥さんは絶対に独立する」と言い切ったT大工さんは見る目があったということなのでしょう。今思えば、すごいです(^^;)。
そして、私が本当に独立するときも相談したりして、独立後、本当に私の現場を手伝ってくれるようになりました。
独立して約13年も経ちました。
ようやく自宅を建てる機運が高まり、そんな我が家の家づくりの約束をしたのは約20年前・・。
私「我が家の木工事に、岩手まで来れますか(^^;)?」
T大工さん 「仕方ないなぁ・・。20年前の約束だから・・。」
つづく
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第27話:地中熱利用 「ヒートポンプ」って何?
この実験住宅には地中熱を利用するため地面に深さ100mの穴を1本掘っています(ボーリングにて)。
【 サンポットのカタログのイメージ図です。 】
深さ100mというと図にするとこんな感じです(長っ・・(@@;)
その100mの穴に液体を循環させるパイピングをして「暖房」や「融雪」・・、
そして、なんと「冷房」にも地中熱を使います。
言葉にするのは簡単です。
でも・・、「暖房」や「融雪」に熱を利用するとすれば、それは「50℃~80℃」の熱が必要になります。
地中の熱はせいぜい10数℃です。
地中の熱が10数℃なのに、どうやって50~80℃の熱になるのでしょうか・・。
それが 『 ヒートポンプ 』です。
<<< ヒートポンプを少し理解してみましょう >>>
① まずは「物質」で考えてみましょう。
丘の上に「池A」があるとします。丘の下の方に「池B」があるとします。
雨が降ると「池A」の水はあふれて、小川を通って下の方にある「池B」に水が流れます。
このように、物質は「高いところから低いところ」に移動します。
しかし、何らかの事情で「池B」の水を「池A」に送りたいと思ったとき、どうすればいいでしょう?
そうです。ポンプを使うのです。
ポンプを使えば水は「低いとことから高いところ」に移動します。
② 今度は「熱」について考えてみましょう。
中央を断熱ドアで仕切った2つの部屋があります。
左の部屋の室温は30℃とします。右の部屋の温度は10℃とします。
その状態で、断熱ドアを開けると、
左の30℃の部屋から右の10℃の部屋に「熱」が移動して同じ温度になろうとします。
これを先ほどの丘の図にすると、熱も「高いところから低いところ」へ移動しているということになります。
しかし、「地中熱」や「空気熱」のようにちょっと低い温度では、そのまま生活熱には使えません。
『少し低い温度の池』から室内の「暖房」や「給湯」に使える『高い温度の池』に
熱を何とか移動させないとなりません。
それをするのが「ヒートポンプ」なのです。
そうなのです。
熱も物質と同じようにポンプを使えば、低いところから高いところへ移動できるのです。
もう少し具体的に言いますと、
10℃の水を「何らかの方法」で50℃に変化できると・・、
20℃を必要としている暖房に使えます。
40℃を必要としているお風呂に使えます。
・・ということなのです。
なんとなくヒートポンプのイメージが出来てきましたでしょうか。
「何らかの方法」とは何でしょう・・。それは物質の「圧縮」です。
空気でも水でも、圧縮すると熱が上がります。
人間の力で圧縮する程度では大きな温度上昇は感じませんが、機械の力で圧縮すると温度がかなり上がるという仕組みです。
外気温‐5℃~‐10℃の空気から熱を汲み上げる方法を「空気熱ヒートポンプ」と呼び、10数℃の地中を通して10数℃になった液体を圧縮して熱を汲み上げる方法を「地中熱ヒートポンプ」と呼びます。
もちろん、少しでも高い温度の物質を圧縮するほうが、より安定した高い熱に変化できます。そのため地中熱のほうが効率は良いということになります。
「物質」や「熱」は、自然の法則として、高いところから低いところへスムーズに流れます。
でも、なぜか「お金」は 高いところから低いところへスムーズには流れません(^^;)
蛇足でした・・(--;)
この地面に100mも掘っていろいろと調査・実験しています。
測定結果は、のちのち考察&公開していきますのでご期待ください(^^)
つづく
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第26話:基礎工事中の慌ただしい変更
基礎が進行しているのと並行に新しいソーラー集熱の実験の打ち合わせが進んでいたため本当にギリギリでの基礎変更が多くありました(--;)。
① 排熱貫通孔の設置
基礎の立ち上がりをソーラー集熱の配管が通ることになったため、貫通するパイプを事前に設置することが必要になりました(下図の赤丸部分です)。
コンクリート工事の後に直径20㎝もの大きな孔を空けるのは非常に大変な作業になるので、断熱型枠を施工するギリギリの段階で貫通パイプの設置が行われました。
もし、下の写真のようにコンクリートを流し込んで固まった後ですと、ほぼアウトだったギリギリの変更でした(><)
次に玄関土間を挟んで東側の蓄熱層に温風を送るダクトも、
玄関土間のコンクリートを施工する前に設置しないと完全にアウトの工事でした(下図の青丸部分)。
断熱ダクトで巻いて、その後ここは砕石とコンクリートでかさ上げを行いました。
② 蓄熱層の施工
ソーラー集熱を蓄熱するため、「型枠ブロック」と呼ばれるものを設置することが決まりました。
その設置の様子が下の写真です。
蓄熱ブロック施工後、鎌田先生や他の研究者の方も確認に来ていただいて次の指示を受けました(^^)。
③ 融雪配管の施工
最後にウッドデッキにする予定だった部分をタイルテラスにして、かつ融雪実験の配管をするというまさに綱渡りのような変更工事でした(^^;)
どの作業もタイミングが悪ければ実験そのものがアウトになり兼ねない非常にヒヤヒヤの変更工事が続きました(><)
ギリギリで何とか進んでいることに、「いい流れなんだ」と
ポジティブに考えることで前に進んでいる印象でした(^^;)
基礎屋さんも「半分苦笑い」「半分ぼやき」のような感じで工事は何とか進んでいきました。
つづく
【木の香の家 展示場 兼 実験住宅 物語は 5日 15日 25日 に何とか更新していきます。】