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⑦「外壁パッシブソーラー」ウソ?ホント?の総括 その2

【考察3】

次に、壁模型の測定データーではなく、実際の外壁パッシブソーラー住宅における通気層上部の冬の温度測定データーを見てみましょう「グラフ6」。測定期間は、壁模型の測定した年と同じ、2004年の12月末ころ〜2005年の2月です。
図の測定点2と測定点3のデーターです。この工法を【外壁パッシブソーラーA】と仮称します。

外壁パッシブソーラー

外壁パッシブソーラーの概略図

温度のグラフ

実際の住宅における通気層の場合、上部が密閉されていませんので、暖められた通気層の空気は常に上昇して行きます。そのため濃縮されることはありません。
茶色い通気層上部の温度の波形は、最大23.8℃・最低で-5.1℃・平均4.0℃を示しています。


しかし、20℃を越えたのは、一冬で3日間のわずかな時間になります。

通気層の上部が解放されて空気が動く状態では、熱が濃縮されないため、冬に20℃を越える日がほとんどないことを意味します。

ただし、通気層の空気を直接室内に入れる工法の場合、ある程度の温度に達するまで、ダンパーがしまっていることになるので、通気層内の温度はもう少し濃縮されて上がるものとは思います。
ダンパーが開けば、通気層内の空気は動き出しますので、上記の測定と同じように、通気層内の温度は、すぐに20℃以下に下がるものと予想できます。

【考察4】

またまた視点を変えて、この外壁表面で太陽光を熱に変えるパッシブソーラーの手法が
どの程度の効果があるのか・・・、別の視点で見てみましょう。考察1〜3を見ていくと、【外壁パッシブソーラーA】が全く効果の無いようにも受け取られてしまいますが、効果は0ではありません。大切なのは、「本当はどれくらいの効果があるのか」・・・ということなのです。

外壁パッシブソーラーAの小屋裏の温湿度

上の「グラフ7」は、【外壁パッシブソーラーA】の小屋裏の温湿度を測定したものです。この測定結果でひとつのポイントは、一冬通して、小屋裏の温度が平均5.9℃を示しているという点です。
垂木間にカネライトフォームを挟んでいるため、屋根面の断熱効果があり、小屋裏に上がった熱が逃げづらくなっているのです。正直、「お!」少しは効果があるんだな・・と思い、普通の高断熱住宅の小屋裏温度を翌冬に測定してみました。
測定状況は写真の通りです。

高断熱住宅の小屋裏温度の測定状況

測定結果は下の「グラフ8」です。

高断熱住宅の小屋裏温度の測定結果

測定結果で大切なポイントは、小屋裏の平均気温が0.9℃で、ほぼ外気温と同じでした。
つまり、一冬の小屋裏平均温度で、普通の高断熱住宅の0.9℃と【外壁パッシブソーラーA】の5.9℃の間に5℃の差がありました。

【ここからが大きなポイントです!】

【外壁パッシブソーラーA】の小屋裏と、一般的な高断熱住宅の小屋裏では、冬の間の平均気温に5℃の差がありました。
「この5℃の差とは、どれくらいの効果があるのか」・・・という事が大切なのです。
単純に、「小屋裏の温度が、冬でも5℃〜7℃あるんですよ!」と強調すると、ものすごい効果があるように消費者に印象づけることも出来ます。

さて、この温度差にどういう効果があるのか、少し、分析してみましょう。

断熱材とは、熱を完全に止める材料ではありません。その材料の断熱性能によって、一定時間内に移動する熱の量を抑える材料です。また、移動する熱の量を少なくする方法には、「断熱材の両側の温度差を小さくする」ということも効果があります。そういう点で、 小屋裏の温度が高いということは、室内との温度差を小さくしますので、熱の移動を緩やかにします。

小屋裏の温度

もう少し具体的に考えてみましょう。
測定結果に若干の余裕をみて、小屋裏温度7℃に想定して計算してみます。

外壁パッシブソーラー工法の場合:室温20℃ 小屋裏平均温度7℃ で 平均温度差 13℃。
一方・・ 高断熱住宅の場合:室温20℃小屋裏平均温度0℃で平均温度差 20℃


天井の断熱材に高性能グラスウール100mmとした場合で考えてみます。
私は旧表示の kcal/m²・h・℃の単位の方が理解しやすいので、そちらで考えてみます。高性能グラスウール100mm厚の熱貫流率 K=0.33kcal/m²・h・℃は、次のような意味があります。

高性能グラスウールの熱移動

○ 室内20℃ 小屋裏0℃の温度差20℃では、この断熱材1m²を通って、1時間に6.6kcalの熱が移動します。
○ 室内20℃ 小屋裏7℃の温度差13℃では、この断熱材1m²を通って、1時間に4.29kcalの熱が移動します。

同じ断熱材で同じ厚みでも、両面の温度差が小さいと、1時間あたりに逃げる熱の量が小さい事がわかります。
そういう意味で【外壁パッシブソーラー理論】の効果は0ではありません。
しかし、この熱の逃げる量は、温度差が大きい場合、断熱材を厚くすることで補うことが出来ます。


今度は、温度差20℃でも1時間に1m²あたり4.29kcal に抑えるには、断熱材の厚みを100mmからいくら厚くすればいいかを考えてみます。
つまり、温度差13℃の【外壁パッシブソーラーA】と同じ効果を得るには断熱材をいくらにすればいいのか・・・ということです。
これには、断熱性能表も必要になります。

下表が断熱材の種類と厚みによる性能値をまとめたものです。

K は Rc の逆数、K=1÷Rc となります。
もちろん
Rc=1÷K です。

断熱性能表

まず、温度差20℃で1時間に1m²あたり4.29kcalの熱が移動する熱貫流率を【K1】とします。

【K1】×1m²×温度差 20℃=4.29kcal/h
この方程式を解けばいいのです。

【K1】=4.29kcal/h÷1÷温度差 20℃

【K1】=0.2145kcal/m²・h・℃
熱抵抗値 Rc=1÷【K1】=1÷0.2145=4.66

断熱厚

計算式と断熱性能表から読み取ると、温度差20℃でも、155mm厚の高性能グラスウールを使えば、温度差 13℃の状態で高性能グラスウール100mm厚から逃げる断熱性能と同じということになります。
他の断熱材で計算しても、同じ断熱材であれば同様の結果が得られます。つまり、天井の断熱材を1.55倍厚くすると同じということです。

左:外壁パッシブソーラーの天井断熱効果 右:一般的な天井断熱効果

【外壁パッシブソーラーA】の天井の断熱材は、写真のように袋入りのグラスウール100mm厚で、しかも、カタログの絵で描くようにきれいにはいかず、いろいろな下地にぶつかって、隙間が多い状態になってしまいます。

外壁パッシブソーラーAの天井の断熱材

この断熱性能の1.55倍の厚みと同じ(この場合は155mm厚)効果を得る為に、垂木間に、高価なカネライトフォーム50mm厚を、かなりの手間隙をかけて設置していくわけです。普通に200mm〜250mmのブローイングをした方が、かなり安くて、かなり高性能だというオチになってしまいます(^^;)。 カネライトフォームを大量に使う・・ということで建材メーカーさんにとってはうれしいことですが、ユーザー側の目的である対費用効果としては効果が小さい・・ということなのです。
それでも、一般の方は、営業マンに「天井裏の温度は冬でも7℃なんです!!!」と言われれば、「暖房費が掛からずあったかい、魔法の家」・・・と想像してしまいます(^^;)。


さて、ここからが、また大事なポイントです。
仮に天井の断熱材でブローイングの厚みを変えた場合、いったい一冬の暖房費にどれだけの差が出るのか・・という点です。
100mm 厚 150mm 厚 200mm 厚 250mm 厚 300mm 厚 にした場合、
一冬で暖房のための灯油消費量がどれだけ違うのか比較してみましょう。

仮想する建物を下記のようにします。

10m×7mの建築面積 70m²で 総2階の140m²
床断熱 高性能 GW150mm 充填
壁の断熱 高性能 GW100mm 充填
サッシ面積 30m²前後と仮設定 PVC アルゴンガス入り Low-e ペアガラス
気積 380m³で換気を0.5回/h
天井断熱 ブローイングで厚さを変える
立地条件は、岩手県北上市の気象データー
建物内部、24時間平均室温20℃
計算ソフト Q-PEX(新住協開発)

天井の断熱材の仮想家

これらの条件の中で、天井の断熱材の厚みだけを変えてQ-PEXで燃費計算をしていくと、
下のような結果が得られます。

ブローイング 100mm 厚の場合の一冬の暖房灯油量 1380 リットル
ブローイング 150mm 厚の場合の一冬の暖房灯油量 1290 リットル
ブローイング 200mm 厚の場合の一冬の暖房灯油量 1240 リットル
ブローイング 250mm 厚の場合の一冬の暖房灯油量 1210 リットル
ブローイング 300mm 厚の場合の一冬の暖房灯油量 1190 リットル


つまり、【外壁パッシブソーラーA】のパッシブソーラー効果は、一冬の暖房灯油を、1380 →1290リットルに減らす程度(約90リットル減)というレベルなのです。
(※注意:建物の壁・サッシ・換気の断熱性能で、減り具合は変わってきます)ブローイング250mm厚の方が安い上に、もっと灯油消費量を減らします。

仮にブローイング200mm厚を施工したうえに、垂木間にカネライトフォームを施工して集熱効果を得た場合、【外壁パッシブソーラーA】の200mm厚のブローイングは、一般の天井断熱施工の300mm厚(約5割増し)に相当します。
その効果は、一冬で暖房灯油を1240→1190リットルに減らす(50リットル減)効果になります。
やはり、普通に300mmブローイングをしておいた方が安くて、施工精度と効果が安定します。
また、ある程度、天井の断熱厚みが厚くなれば(250mmとか)、わざわざカネライトフォームを垂木間に使うのではなく、その費用をサッシの断熱性能UPに使ったり、壁を付加断熱した方が、家全体の燃費はよくなるというオチになってしまうのです(^^;)

例えば、先ほどの仮想家1において各部位の断熱性能をレベルUPしてみます。

壁 高性能GW100mm厚の充填断熱+50mm厚の付加断熱
基礎 スタイロフォームB類3種 50mm+50mm
天井 ブローイング 300mm厚
換気 熱交換換気 50%回収率
そうすると、北上市での一冬の暖房灯油消費量は約1000リットルと試算されます。

○ この状態から、外壁パッシブソーラーAの効果を期待して、屋根にカネライトフォーム50mmを全面施工しても、灯油は一冬で約30リットルしか減らないと試算されます。
○ ちなみに、サッシのガラスをLow-eペアガラスの色付きタイプのガラスからクリアタイプガラスにするだけで、100リットル灯油が減ると試算されます。施工コストは変わりません。
○ また、大窓3箇所程度に断熱障子か断熱ブラインドを付けると、約50リットル減ると試算されます。これでも、屋根全面にカネライトフォームを施工するより安く済むと思います。

【外壁パッシブソーラーA】は、小屋裏の平均気温が、普通の天井断熱住宅の小屋裏より5〜7℃前後高い・・・ということでは、効果は0ではありません。
ただ、間仕切壁の上部が小屋裏に筒抜けになってしまうような施工方法では、その5〜7℃の高い温度も、全部が太陽熱の効果なのかは疑問が残ります。室内の暖房した熱が漏れ出て小屋裏を暖めている可能性は否定できません。また、その熱が通気層から外部に排出されるようでは、本末転倒な燃費の悪い住宅工法になってしまいます。
仮に、5〜7℃の温度差が100%太陽熱の効果だとしても、その効果は、一冬の暖房の燃費を5%前後抑える程度の効果なのです。その効果は、断熱材を厚くすれば、簡単に達成できます。大きな細工して少ない効果を得るより、小さな細工で大きな効果を得る方がユーザーの皆さんのためかと思います。
問題になるとすれば、その程度の効果を、カタログ営業トークで消費者にどのように伝えているかです。まるで、暖房費を半分以上も減らすかのような印象を与えるものだとすると、その工法の性格自体が疑われてしまいます。

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