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木の香の家

教えて「断熱さん!」断熱コラム 断熱勉強講師を務める、木の香の家代表白鳥顕微志の書きおろしコラム〜牛一頭いれば家一軒が暖かくなります

【ACT2-2】通気層の役目

さて、次に「通気層」の役割について見てみましょう。
下記の「写真B」は、外壁下地となる通気層の施工状況写真です。
現在では、ほとんどの住宅で施工されていますが、断熱層と外壁の間に必ず、外部とつながっている通気層を設けます。外壁はこの木材の上に施工されます。

通気層の施工状況 この通気層は、基本的に外の空気とつながっているため、絶対湿度は、外の空気と近い環境になります。
この通気層の役目は、壁の中に入った水蒸気を外部へ逃がす働きをします。

ここで湿度について、原理原則をおさえておきましょう。「図イ」は1つのガラスボックスの中間に、構造用合板や紙などで仕切った状態の図です。その右側のスペースだけ水蒸気を多量に供給しました。

湿度の原理原則

湿度は必ず高い方から低い方へ移動して、均一になろうとします。そのため、中間に水蒸気が通る仕切りが付いていれば、その仕様によって時間は違いますが、いずれ均一な湿度になろうと水蒸気は移動して、「図ウ」のようになります。
もう一つ、自然現象の原則を考えてみましょう。これは地域性がありますが、日本のほとんどの地域では、冬の外部に空のガラスコップを置いても結露しないと思います。冬の外部は確かに寒いですが、乾燥している(湿度が低い)ため、自然の状態では露点温度に達しないということです。温泉場とかですと、この原則が通らない場所もあると思います。

その原則を踏まえて、「防湿層」と「通気層」をきちんと施工した壁での結露の可能性を具体的に見てみましょう。まず、冬について見てみますと、もっとも結露の可能性があるのが、「図エ」の★の部分になります。

現在の通気層工法の基本

通気層は外部扱いですので、「気温も湿度も低い状態」になります。★印の部分は断熱層の中でも最外部ですから、温度は、ほとんど外気温と同じになります。
そこで、湿度を考えてみましょう。
これは、防湿層の有無によって大きく影響します。★印の部分の湿度が、通気層より高ければ、構造用合板や防風透湿シートを通過して、★印の湿気は通気層へ引っ張られます。しかし、それには、大なり小なり時間が必ずかかります。その時間内に「★印から通気層へ抜ける水蒸気の量」より、「★印に供給される(主に室内から)水蒸気の量」が多ければ、間違いなく★印の湿度は上がっていき、いずれ露点温度に達して結露を起こします。
 逆に、一定時間内に「★印から通気層へ抜ける水蒸気の量」が、「★印に供給される水蒸気の量」より多ければ、★印は外部の湿度(通気層の湿度)と同じになります。外部と同じ湿度であれば、★印の気温が外部と同じでも結露はほとんどおきません。要は、★印での水蒸気の「供給」と「放散」のバランスなのです。

それでは、室内側からの水蒸気の供給量をなるべく減らすにはどうしたらいいのでしょう?その役目が「防湿層」と、あとで説明しますが、もっともっと重要な「気流止め」になります。(「気流止め」、この言葉、覚えておいてください)。0.2mm厚のポリシートを防湿層として1枚貼りますと、水蒸気を通さない力(透湿抵抗)は9mmの構造用合板の約80枚分に相当します。「図オ」

水蒸気を通さない力(透湿抵抗)の図

つまり、たかがポリシート1枚ですが、きちんと防湿層を施工しますと、★印の部分では水蒸気の供給量は、放散量の1/80という計算になります。
ただ、机上の論理とは違って、現場施工では釘の穴やタッカーの穴などがありますので、きれいに1/80ということではありません。施工精度で左右されますが、釘穴やタッカーの穴などでは、★印での結露は起きないことは分かっています。どれくらいまでの穴まで大丈夫なのか・・?ということになりますと、石膏ボードにビニールクロスで内装を仕上げてますと、その分でも透湿抵抗が期待できるため、1㎠~2㎠の穴くらいも問題ないそうです。だからといって、意図的にいたるところに穴を開けないでください。過敏にならない程度に施工すれば、★印での水蒸気バランスは結露にならないという意識でお願いします。
発泡系の断熱材は、それ自体に透湿抵抗があるため、防湿層を兼ねた断熱層(ポリシート付き断熱材)と捉えていただければOKです。

ここでも、ちょっと小休止

ポリシートを使う施工も、発泡系の断熱材を使う施工も、実は目的は同じで、「高い透湿抵抗」によって、室内の水蒸気の透過を抑制して、断熱層の最外部での結露をさせないことなのです。
ですから、自社で発泡系の断熱材を使っていながら、ポリシートを使う工法をビニールハウスと言っている営業マンは、実は不勉強なのです。透湿抵抗という物性を考えると自社の建物もビニールハウスということになってしまうのですから。