この本を読んで少しだけ感想を述べさせてください。
「外断熱」が危ない!・・この本は出版されて、数ヶ月経っている本ですが、恥ずかしながら最近(平成15年5月)読みました。
著者である西方さんが、表題を『外断熱ブームが危ない』にしてくれと頼んだのに、出版社の要望で『外断熱が危ない』になったことを聞き、なんか面白そうと思い読んでみました。出版社には、出版社側の販売部数を伸ばしたいという事情があったのでしょう。結果的には売れてるみたいですが・・。
この本は、単に外断熱を否定して、充填断熱を擁護している本ではありません。ブームになっている外断熱の隠されているデメリットも書きつつ、「断熱」という分野について、客観的に述べられている、珍しいくらい正しい本です。本全体の1/4は、マスコミさえも間違っている「鉄筋コンクリート造と木造の外断熱」についての指摘や、「いい家がほしい」の矛盾点を指摘しています。その他3/4は、「本当に正しい断熱」についての説明です。
「断熱」や「性能」を数値やデーター・現場写真・施工図面などを使って説明していますので、一般の方には少し難しい内容と受け取られるかもしれません。・・が、一読していただければ、断熱方法が、実は多種多様で、現在ブームの外断熱だけが絶対ではないことがなんとなく分かってくると思います。
とくに面白いのが、ベストセラーになったソーラーサーキットの「いい家がほしい」(松井さん著)に対する、西方さんの見解の部分と、フランチャイズに対する疑問の部分です。
「いい家がほしい」に書かれている、松井さんのちょっと乱暴な「断熱イメージ論」を、西方さんが1つ1つ丁寧に、物理的、論理的に切り崩している点は、非常に面白く、一般の方にとっては、外断熱を絶対視させられていた呪縛から逃れることができると思います。
全てのフランチャイズが悪いわけではありませんが、多くのフランチャイズは、建材メーカーが世の中に仕掛けてきます。その建材を高価に売るのが一番の目的ですから、その建材や、断熱理論を絶対視させて、他の工法を排他的に強調します。そのときに、「物理論」ではなく、「イメージ論」で一般の方にすり込む手段をとります。その方が、一般ユーザーの耳には心地よいからです。
ソーラーサーキット工法でも、使う断熱材は、決してスタイロフォームだけにこだわる必要はなく、撥水グラスウールボードでもいいし、また、スタイロフォームよりも性能面や安全面(難燃性)で優れているネオマフォームでもいいわけです。それを、スタイロフォームを絶対視している点は、典型的な建材メーカー主導のフランチャイズと言えるでしょう。
建材メーカー主導のフランチャイズで怖い点は次の点です。
○ イメージ論(文章やビデオ)の中で、物理的におかしいことでも「過大な表現」や「語気を強める」ことで、その工法や建材を「絶対視」させること。
○ 絶対視させるためには、ありとあらゆる手段をとります。そして、通常より高い金額で買わせること。
その「通常より高い分のお金」が、汗水流して作業した地元の工務店や職人さんに、分配されるのであれば、地域経済としては良いのかもしれません。ただ、フランチャイズとは、得てしてそうではありません。この「通常より高い分のお金」は、それを仕掛けた本部の仕掛人に吸い上げられます。加盟している工務店が潤うシステムは少ないと言っていいでしょう。
この「絶対視」という手段は、実は、「宗教化」に近い方法です。悪質な宗教は、ある物体や教祖を絶対視させて、信者から「多額のお布施」を取るという方法でトラブルを起こしています。方法が違うとはいえ、物理的におかしい理論を、巧みなイメージ論と表現を使って絶対視させ、信じてしまったユーザーに「通常より高い金額」で家を買わせ、そのお金を中央の仕掛人へ吸い上げる。そんな姿が多くのフランチャイズです。「お布施」が「通常より高い金額」に代わっているに過ぎないようなものです。
この「外断熱が危ない」(西方さん著)では、その辺も、面白おかしく指摘しています。そういう意味で、この本は読む価値があります。
この本が出てから、ソーラーサーキットのホームページの談話室コーナーでは、いろいろと論戦があったようです。その中には、次のような記述もあったそうです。(私は、見ておりませんが・・)
「本当のところ、今まで議論してた外断熱理論はどうなのよ?(疑問視)」
「商売は松井氏、理論武装は西方氏。でも、これからは理論武装の時代だろうなあ」
「普通に西方氏に軍配!松井さんお疲れさん」
「松井さん。これだけみんなに論議させて、気まずくなったらだんまりを決め込むのはずるいのでは?」
「だれか、松井さんを弁護する強力な代弁者や弁護人が出ないとまずいよ」
などなど・・。
「イメージ論」を「物理論」で否定された松井さんは、その後、この話題には顔を出さなくなりました。数ヶ月の沈黙ののち、ソーラーサーキットは、読売新聞の一面全面に5000万円かけて、「いい家がほしい」の誇大広告を出しました。5000万円かけてもソーラーサーキットがペイすると決断したのでしょう。まさに、物理論で手も足も出なくなったので、多額の現金を使って正当化するというフランチャイズならではの乱暴な手段をとったということになります。
以前、エアサイクルも、その理論の矛盾が指摘され始まったとき、多額のお金を使ってこんなCMを流していました。「私たち(エアーサイクル)にも言わせてください!なぜ、いままで、何万人というお客様に支持されてきたのでしょうか!!」・・。ここに、科学的根拠や物理的根拠は全くありません。語気を強めて訴えているだけでした。しかも、何万人の人が支持してきたのではなく、何万人の人がフランチャイズの戦略にはまってきただけなのです。
それにしても、そんな莫大な宣伝費、どっから用意したのでしょう・・。「通常より高い金額」・・でしょうか・・。
私は、「家づくり」という過程に中で、設計や現場監督という立場で携わっています。「造る」という行為に近いポジションだとは思います。そんな業務の忙しさから考えると、フランチャイズの本部の人たちって、毎日の業務で家づくりの「造る」に、どれくらいかかわっているのだろうと疑問を持ってしまいます。本当に家づくりが好きで、ユーザーのために工法を考えているのであれば、物理的な問題点を指摘されれば、その部分を検証し、工法を改善するべきなのか検討したり、物理的に正しいことを証明するのが、本来の姿勢だと思います。
「否定されれば、誇大宣伝で覆い隠す」・・という姿勢を見るたびに、こう思ってしまいます。
フランチャイズの本部では、「どうやって、一般ユーザーに思い込ませて、お金を中央へ吸い上げるか」という戦略やシステムづくりに日々頭と時間を使っているのだろうなぁ・・と。
そのフランチャイズ工法が、中途半端な工法であれば、一番の被害者はユーザーの皆さんになります。そして、潤うのは、極一部の仕掛人だけなのです。
私は「いい家がほしい」のビデオは見ましたが、本は読む価値がなさそうだったので読みませんでした。ビデオを見たとき、エアサイクル同様のフランチャイズ戦略だと思ったからです。でも、西方さんが、設計業務の時間を裂いてまで世の中に正しい情報を流さざるを得なかったのには、「いい家がほしい」が予想以上に一般のユーザーさんに影響が与えていたからでしょう。まさに、エアサイクルの再来です。
「いい家がほしい」を読まずに、その本をどうこう言うのは失礼かもしれませんが、「外断熱が危ない」に記載されている次の事項が本当であればびっくりです。
@ソーラーサーキットでは、スタイロフォームの中で一番性能の悪い「B類1種」を基本仕様にしていること。
A構造用合板で耐力壁を造らずに、筋交いの上にスタイロフォームを貼っていること。
「B類1種」は、外張り用の撥水グラスウール32Kよりも断熱性能が悪いうえ、外壁のずれ下がりの危険度が高いです。また、構造用合板で耐力壁を造らないと、断熱材が地震のときにずれて、隙間だらけになる可能性が高いです。こんな、文章を書いているときに、偶然、東北に震度6の地震がきました。Aの方法で施工された昨年のソーラーサーキット新築住宅の今後の冬が心配です。外部からサーモカメラで熱漏れ撮影による検査をお勧めします。
もし、@Aが本当であれば、数ある外張り断熱工法の中で、ソーラーサーキットは10年遅れた外張り断熱理論と言えるでしょう。もしくは、十数年前に施工した写真を本に掲載していたのかもしれません。現在は、B類3種で構造用合板による耐力壁は最低の仕様にしてあればいいのですが・・心配です。
ちょっと固いお話になりましたが、こんな目的で読むとすれば、この本は推薦の1冊です。
○「断熱」の『本当に』正しい考え方を知るという目的
○いろいろある工法の中で、どれが、自分たちの求めている断熱方法かを知る目的
○外断熱絶対主義の盲点を知りたい目的
○工務店さんにとっては、取り組んでいる工法が正しいのか間違いがあるのかを見つける目的
一般の方から、必要以上のお金を吸い上げて、一部の仕掛人が潤う組織がなくなって、楽しい家づくりが出来る時代が来てほしいものです。
追記:高断熱高気密住宅の大きな誤解である「窓を開けてはダメ!」・・という捻じ曲がった認識の発端が、アキレス工法の暴れ馬、南雄三さんだったとは・・、この本で初めて知りました。やっぱり、大声で自分を絶対視するトークには、なにかあるものなんですね・・。
|