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木の香の家

教えて「断熱さん!」断熱コラム 断熱勉強講師を務める、木の香の家代表白鳥顕微志の書きおろしコラム〜牛一頭いれば家一軒が暖かくなります

【ACT7-5】基礎断熱の注意点 その①-床下のカビ-

基礎断熱は、比較的新しい工法ですので、新住協の会員工務店さんはじめ、私も随分苦労してきました。特に2000年代ですと、必要な建材も開発が進んでおらず、非常に苦労した覚えがあります。
これから始める皆さんも、簡単に考えると大きな失敗をする可能性がありますので、私などが経験した失敗や改善方法を参考にしてみるといいと思います。

① 基礎断熱-苦労物語-「カビとの格闘」
基礎断熱をして、ほとんどの住宅会社で必ずといっていいほど経験するのが、床下のカビの発生問題です。

床下地合板のカビ上の写真は、私の現場で発生した床下地合板のカビです。白カビ?かな・・・。このほかにも赤いの♪青いの♪黒いの♪さまざまカビを発生させた経験があります。写真を見ると1999年ですねぇ(^^;)...。この頃は、ちょくちょくカビ問題がありましたが、最近は、ほとんど床下にカビを生やすことはありません。

○基礎断熱でカビが生える原因
基礎断熱でカビが生える危険性が高い時期は、春頃完成した住宅で6月~9月になります。
原因の一番は、土間コンクリートから出てくる大量の水蒸気です。引渡し時期のコンクリートは乾いているように見えます。しかし、コンクリートの水分が抜けて乾くには、半年~1年、2年と言う人もいます。それほどコンクリート工事に使われる水の量が多いのです。

土間コンクリートから大量の水蒸気が発生

春先に終わる工事ですと、コンクリートの水分が出る時期に夏を迎えますので、床下は高温多湿の状態になります。これがカビを発生させる環境になるのです。
この水蒸気がどれだけ出るのか...、感覚を掴むために1つのデーターを下に掲載します。

基礎断熱で暖房方式が床下放熱機を採用した住宅のデーターの測定グラフ1

上の「測定グラフ1」は、基礎断熱で暖房方式が床下放熱機を採用した住宅のデーターです。
上部の緑とオレンジ色の折れ線が、1階と2階の室内の湿度を示しています。12月に引き渡したので、すぐに暖房時期にはいりました。床下で積極的に暖房していますので、コンクリートから出る水分の蒸発を促して、室内の湿度が安定するのに2月末くらいまでの2ヶ月掛かっています。つまり、床下のコンクリートのスペースに熱を積極的に加えても、湿度が安定するまで2ヶ月も掛かるほどの水分量が土間コンクリートには有るということです。ここまでコンクリートの水分が抜けると、翌年の夏に床下でカビが生えるという心配は、ほぼ無くなります。

○1年目の床下水蒸気対策 
カビの原因が、主に1年目のコンクリート土間から出る水蒸気だということが分かってきましたが、それでは、この水蒸気にどうやって対応してカビ問題を防げばいいのでしょう・・・。それにはいろいろな方法があります。

[その1:断熱換気口]
初めて基礎断熱をする人であれば、断熱換気口を家1軒に3~4個程度つけることをお勧めします。
   
(左上)断熱換気口:だんき君 (上中)断熱蓋が閉まった状態 (右上)断熱蓋が開いた状態 (下)断熱換気口設置状況

工事中はもちろん、建物を引き渡してまだ暖房する時期でなければ、この断熱換気口を開けておき、風で床下の空気を動かすという方法です。夏に断熱換気口を開けて、風下の方に付いた換気口に手をかざすと、じめ~っとした多湿の風が出てくるのがよく分かります。こうすれば、ほぼ床下に1年目のカビは発生しません。
2年目以降は断熱換気口の断熱蓋を開け忘れても大きな問題にはなりませんが、冬は閉め忘れると暖房の効きが悪く、大変なことになりますのでご注意を(^^)。

[その2:お客様に除湿機を毎日交換してもらう(引き渡し後、半年くらい)]
これは、断熱換気口を付けなかった場合の方法です。除湿機を押入れの床下点検口などから床下においてもらい、毎朝にでも水を捨ててもらうというのです。しかし、毎日となると結構な作業ですので、お客様によっては難しい場合があります。この方法でも100%とは言いませんが、カビの発生問題はある程度解消できます。

[その3:床面にガラリ]
2年目以降のカビ問題を抑制するには、1階の床面にガラリを設置して、室内と床下の空気を出来るだけ対流させるという方法がいいです。

床ガラリと床下放熱機

1階の床に設置するガラリの個数のルールは明確なものはありませんが、床下の空気が上がると想定する位置と、空気が落ちて床下に戻ると想定する位置に配置する。あくまで経験則ですが、私は25~30坪くらいの1階床ですと、約15cm×60cm(開口面積0.1m²)くらいの床ガラリ8~10箇所ほど点在させています。設置場所としては、掃き出し窓の足元付近を床下の空気が上がる位置と考え、階段の付近を空気が床下に落ちる(リターンの)位置として設置します。

リターンのガラリの図

これは、夏にしろ冬にしろ、太陽高度が低いときに窓付近の床は日射で暖められ、その周辺の空気温度が上がり上昇します。その分、どこでもいいのでリターンのガラリを設けておくと、空気は静かに対流します。特に階段の降り口付近は階段からの対流空気が降りる道筋ですので、その流れがぶつかる壁付近にガラリを設置すると、対流が促されるとされています。
この対流による空気の動く量は定かではありませんが、1時間あたり数百m³も動くと言われています。

[試行錯誤:床下に排気ファンを付けるか付けないか]
これに対して、意外とカビが発生してしまう例があります。
それは、基礎にパイプファンを設置、もしくは、換気システムの1つのダクトを床下に設置して、床下の空気を一定量、外部へ排出し、パイプファンとは対角上の一番遠いところへガラリを設置するという方法です。

小さいパイプファンによる床下空気の排出

一見、床下の空気を排出するのだから理にかなっていると思えます。・・が、これを採用していたトステムのスーパーウォールだかスーパーシェルで、半分近い家で床下にカビが生えたという報告を聞いています。
理由は、排出する空気の量が中途半端に少ないのだと考えられています。小さいパイプファンだと床下空気の排出量は1時間あたり30~50m³です。夏の場合、その排出分、室内側から暖かく湿った空気が床下に入ってきます。床下温度は夏の場合でも20~25℃とひんやりしていますので、その室内から引き込まれた暖かく湿った空気が、床ガラリからパイプファンまでの10m前後の距離を移動する間に、ゆっくり冷やされて、カビが繁殖する湿度になってしまうのだそうです。これは、地域性もあると思いますので、この方法の住宅の全部がカビの被害になるとは言えないようです。
理にかなっているように感じながらカビが発生しますので、こういう状態になっている住宅では原因がなかなか気づきにくいと思われます。
もし、心当たりのある会社さんがありましたら、視点を変えて対策を考えられた方がいいと思います。